我ながら馬鹿なことをした。 いらついた反動で人を4階の屋上から突き落とすなんて。 しかも、名前も知らない赤の他人。 落ちていく瞬間、世界がとてもゆっくりに感じた。 彼女の表情が見る見るうちに変わっていく。 彼女の服が重力であおられる。髪がなびく。 狂ったことに僕は、その姿にひどく魅せられた。 美しいとすら思ってしまったんだ。 ああ、でも。 落ちてしまった後の彼女の姿は、恐怖以外のなにものでもなかったよ。 ************************************ その後の話をしよう。 彼女は生きていた。 目も当てられない大けがをしたものの、かろうじて生きていた。 あとで聞いた話だが、彼女は1つ上の学年の先輩で、 中学になって日本に戻ってきたハーフらしい。 3年生なのだが、おそらく今年度の卒業はできないだろう。 そして僕は、未だに毎日のように学校に通っている。 僕はあの日、彼女を突き飛ばした後すぐに逃げ出した。 誰も来ない屋上に目撃者は無く、僕の犯行は誰にもばれなかった。 彼女は意識不明を1週間ほどさまよった後、意識を取り戻し、記憶喪失となった。 正確には約1カ月前後の記憶がなくなった。 僕は完全犯罪を成し遂げたのだ。 とはいえ、僕の姿を彼女がみれば思い出してしまうかもしれない。 もともと会う機会もないし、お見舞いにだって行きようがないのだから、 それも心配するまでもなかった。 でも、僕の中ではぐるぐると廻るものがあった。 罪悪感、自分への嫌悪。 真実が、罪が知られることの恐怖。 僕はさらに周りから距離を取り始めた。 それでも死を選ばなかったのは、 彼女の落ちていく姿がこびり付いて離れられなかったのと、 落ちる前に彼女が僕を引きとめた姿が浮かぶからだろうか。 ++++++++++++++++++++++++++++++ 季節は移り変わり、秋になった。 もう少しすれば、じきに冬に変わるだろう。 僕は相変わらずだった。 いじめの日々は続いて大怪我だらけ、 昨日お小遣いをもらったばかりなのに、財布の中は空っぽだった。 わけもわからず、さまざまなことの犯人にされた。 俺がいつコンビニから商品盗んだよ? 死ぬ物狂いに勝ち取った成績も、 カンニングしているというデマを吹っかけられ、職員室に縛られる始末。 世界は何も変わらなかった。 でもある日、それは起きた。 いつものようにサウンドバッグになって、血だらけになっているところに彼が現れた。 俺をサウンドバッグにしているやつらを止め、少し話をした後、やつらは去って行った。 その後彼は俺を保健室まで運び、手当をしてくれた。 「ひどい傷跡の数だな。」 「ええ。・・・まぁ」 「よく今まで耐えてたな。」 「・・・。ええ。」 「大丈夫、あいつらはもうお前を殴らないよ。」 「・・・・」 「約束させた。もう、お前をいじめることは無いよ」 「・・・はは・・・嘘だ。・・・ありえない」 ばかばかしい。偽善で止めに入ってくらいで、あいつらが収まるはずが無い。 「嘘じゃないよ。」 「だ・・・から・・・。ありえないって・・・」 「嘘じゃないよ、だって・・・」 彼はその後。背筋の凍るようなセリフを言った。 「だって、仕向けてたの・・・俺だし?」
いつかは書こうとしていたジュン君BADエンドver.中編といったところでしょうか?。
まだまだ続きます。
ユウキは生きてたけど、本当の犯人は。ね。