一人で生きていくカッコ良さもいいけれど、一人では生きていけないカッコ悪さも捨てがたい



錠の壊れた扉を開いて、一番最初に目に付いたのは
蒼く晴れ渡った空だった。雲一つ無い蒼空。
雨の多いこんな真夏に、ここまで蒼く透き通った空を拝めることはそう無いだろう。
そして、とても暑かった。

僕は扉を閉じて、まっすぐに屋上の手すりに向かう。
下の景色を眺めると、見慣れた校庭が広がっている。

その日僕は決意をしていた。
いや、決意はしていなかったのかもしれない。
手すりに立ちあがり、下を眺めると足がすくんだ。
その一歩が踏み出せなくて、おもわず涙があふれ出してしまった。

現実が怖い。
皆の目が、他人の目が、劣等感が突き刺さる。
理不尽に殴られ、蹴られ、軽蔑されて、わけもわからず犯人になり下がる毎日。
抜け出せない。

「なんでだよ。。。。うごけよぉ・・・」

抜け出す手段を知っている。
でも、足はすくみだす。

「嫌なんだよ。。。もう・・・イヤダ・・・」

もう一度手すりに足をかける。
今度は上手に立ち上がることができた。
風が少しでも吹けばぐらりと身体が揺れる。大きな風が吹けば一溜まりもない。
覚悟のない足で足を少し動かしたその瞬間。

君が現れた。

後ろからやけに大きな声が聞こえた。あんなに大きな声で後ろから急に叫ばれたのに
不思議と驚きもせず、バランスも崩すことも無かった。
聞き慣れない発音の言葉。日本語じゃない。
手すりから降りることなく後ろを振り向くと、そこには体育着を着た金髪の女の子がいた。

見慣れない色の髪と聞き慣れない言葉に驚いていると、
女の子は無理やり僕を手すりからおろして、僕のことを怒鳴りつけた。
何を言っているのかは分からなかったけど、
雰囲気で、何を言っているかは分かった。

でも、僕もそうやすやすと決意を曲げたくない。
もう決めたんだ。
再び僕は手すりに手をかけた。
金髪の女の子は慌ててまた僕につかみかかってきた。
僕はその手を強く振り払った。
振り払ったが、女の子も負けじと再び掴みかかってきた。

振り払う、掴まれる、振り払う・・・・。

何度も続けられる行為にお互いにいら立ち、
抑える力も振り払う力も徐々に強くなっていった。


そして


僕は君を突き飛ばした。
4階の屋上から。
君は下へ下へと落ちて行った。


「・・あ・・・あ、あ。あああああああ!!!!!
・・・・・ご、ごめん・・・・・なっさい。ごめ・・・んな・・・さいっ…ご・・・めん・・・な・・・・」



謝っても、もう遅かった。

僕は正真正銘の犯人になった。



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  • いつかは書こうとしていたジュン君BADエンドver.。
    いきなり暗い小説スタートに私もびっくりだよ。

    落ちも何もないストーリー。いや、ユウキは落ちたけど。
    まだつづくんだなこれが。